QRP(50W)でEMEは可能か?
EMEとその難易度
月面反射通信(EME:Earth–Moon–Earth)はその文字通り、地球から発射した電波を月に反射させ、地球に戻ってきた電波を受信することで通信を行うテクニックです。往復76万kmの伝搬損失だけでなく、月に電波を反射させた際の減衰、月を追尾するための設備が必要と難易度が非常に高いと言われています。具体的には、以下の様な設備が必要と考えられていました。
- 高出力なリニアアンプ(500W or 1Kw)と運用のための上位資格及び落成検査
- 高利得なアンテナ(八木アンテナを4枚〜16枚)
- 低ノイズの受信アンプ
- 月を自動で追尾するシステム
デジタル技術の発達とEME難易度の低下
しかしながら、デジタル通信技術の発達、具体的にはJT65Bモードの誕生と一部EME愛好家の常識を逸した設備に助けられれば、50Wに八木アンテナ2枚程度の弱小設備でもEMEが成功したとの話題を聞くようになりました。
いざ実践
結果として、2020年10月10日、432MHz/JT65BにてDL7APVとEME QSOに成功しました。
アンテナはK1FOタイプの八木アンテナ。25エレをスタックに。スタック幅は約2m。
当日は生憎の曇り空で月を目視できず。
月の位置はWebからリアルタイムで情報を確認し、iPhoneのコンパスと¥100ショップの分度器にて月と思われる方向に向ける。
リグはIC-9700。正真正銘50W出力です。同軸ケーブルとプリアンプの挿入損失を考えると分配器の直下では30W位だと思われます。プリアンプは川越無線を分配器の直下に。相手局のDL7APVは-05dBで見えていましたのでプリアンプは結果として不要でした。
ローテーターにてアンテナを回転。仰角は分度器にて目視&手動。20分に1回程度向きを調整すれば良いので、実際はローテーターも不要でしょう。
実際のQSO結果。初めてのEMEだったので手順を間違えています(汗
QSO時のウォーターフォール。目視でも月から返ってきた電波が問題なく見えていました。
通信ソフトはwsjt-xを使いました。一般的にEMEにはWSJTが使われることが多い様ですが、FT8のQSOで数多くの実績があり、操作に慣れているwsjt-xをあえて採用しました。
コメント
私もやってみたい!と思って随分時間がたってしまいました。うらやましいです。
ところで月にアンテナを向ける方法ですがappleにはあるかわかりませんが、androidにはskyマップという星の位置をリアルタイムで表示するアプリがあるので、それをGPS入りスマホで起動してアンテナのスタックブームに縛り付けておくか、バイク用スマホホルダで固定すると、曇りでも月の位置が簡単にわかるのではないかと思います。
よろしければお使いください。
デジタルモードのおかげで比較的小設備?でもEMEができるようになりました。是非挑戦されてみてはいかがでしょうか。
また、良いアプリの情報ありがとうございます。iOSにはSkyマップアプリは無いようですが、同様の機能のアプリが有償ですがいくつかあるようです。今回の様に天気が悪い時に使えそうですね。試してみたいと思います。